はじめに

日本は地震や台風など自然災害が多く、いつ起こるかわかりません。
そのため、普段から「防災対策」をしておくことがとても大切です。
特に共働き家庭では、災害発生時に家族がバラバラの場所にいることが多く、子どもだけで留守番している可能性もあります。
実際、2011年の東日本大震災では、共働きで両親が帰宅困難となり、自宅に子どもが一人で残されたり、近所の人に預かってもらったケースが報告されています。
近年では家庭の約7割が共働き世帯で、子どもが一人で過ごす時間も増えていると言われています。
本記事では、そうした共働き家庭が家族全員の安全を守るために、防災のポイントを解説します。
一緒に実践しやすい備えや工夫を学んで、家族みんなで災害に備えましょう。
家族全員の安全を守るための基本的な防災対策

非常用持ち出し袋の準備
大きな災害が起きたときに備えて、すぐ持ち出せる非常用持ち出し袋を用意しておきましょう。
救援物資が届くまで最低3日かかるとも言われるので、少なくとも3日分の必要品をリュックサックなどにまとめて、玄関近くなどすぐ持ち出せる場所に置いておきます。
非常用持ち出し袋に入れておきたい基本の用品は次のとおりです。
- 飲料水(1日1人3リットル目安×3日分)
- 非常食(調理しなくても食べられるご飯やビスケットなどを人数×3日分)
- ライト(懐中電灯)と予備電池
- 情報手段(携帯ラジオや携帯電話充電器)
- 救急セット(ばんそうこう、包帯、消毒液、常備薬など)
- 衣類・防寒具(下着、上着、毛布やアルミブランケット)
- 雨具(レインコート)や軍手、タオル、ビニール袋など
この他、赤ちゃんがいる家庭ならおむつやミルク、女性用に生理用品、お年寄りがいるなら薬や補聴器など、家族構成に合わせて必要なものを追加しましょう。
「あれもこれも」と入れすぎると重くて持ち出せなくなるので、本当に必要なものに絞ることも大事です。
また、非常用持ち出し袋の中身は定期的に点検しましょう。
非常食や飲み水の賞味期限、電池や薬の使用期限が切れていないか、年に1回は確認して必要に応じて新しいものと交換します。
毎年9月1日の「防災の日」や年に4回(3月1日、6月1日、9月1日、12月1日)設定されている「防災用品点検の日」などにチェックすると忘れにくいですね。
いつでも新鮮な備蓄が役立つようにしておきましょう。
家族防災計画の策定
家族全員が安全に避難できるよう、家族防災計画を立てておきます。
まず、自宅や学校、職場からの避難経路と、どこに逃げるかという避難場所を確認しておきましょう。
例えば「大地震のときは自宅に留まらず、○○小学校(避難所)に集合しよう」のように、家族で集合場所を事前に決めておくことが重要です。
避難場所までの道のりも、一度家族で歩いてみて安全か確かめておくと安心です。
災害時に家族が離ればなれになってしまった場合の連絡方法も決めておきましょう。
大災害が起きると電話がつながりにくくなるため、NTTの「災害用伝言ダイヤル(171)」や、携帯電話各社が提供している「災害用伝言板」を活用できるようにしておくと安心です。
災害用伝言ダイヤルは、公衆電話や固定電話・携帯電話から「171」をダイヤルして、自分の安否(無事かどうか)を録音し、家族がそれを聞けるサービスです。
伝言板サービスは携帯やスマホから安否情報を登録・確認できる掲示板のようなものです。
事前に使い方を家族で練習しておくと、いざという時に落ち着いて連絡が取れるでしょう。
もちろんLINEやSNSなどインターネットを使ったメッセージも有効です。
災害時には電話よりネット通信の方がつながりやすい場合もあるので、メールやメッセージアプリで「○○は無事です」と送り合う方法も確認しておきましょう。
子どもの防災教育

災害から身を守るためには、子どもの頃から防災意識を高めることも大切です。
普段から少しずつ防災について学んでおきましょう。
まず、家庭でできる防災教育として、遊びながら学ぶ工夫をしてみましょう。
例えば、防災に関する絵本を読むのはとてもおすすめです。
地震や津波をテーマにした絵本が最近はたくさん出ているので、読み聞かせてもらったり、自分で読んでみたりすると「もしも」のときのイメージがつかみやすくなります。
防災かるたやトランプといったゲームもあります。
かるたなら札に書かれた防災の知識を楽しみながら覚えられますし、トランプに書かれた避難のコツなどを親子で読み合うだけでも新しい発見があります。
このように、遊び感覚で防災の知識に触れると、難しい内容も頭に入りやすいでしょう。
次に、家庭での防災訓練も欠かせません。
学校では避難訓練がありますが、家でも定期的に「地震が来たらどうする?」とシミュレーションしてみましょう。
例えば、「夜に地震が起きて停電した」と想定して懐中電灯を探してみたり、火事を想定して119番に電話する練習(電話のかけ方を確認する)をしたり、みんなで机の下に隠れる練習をしたりします。
家族で防災について話し合う時間を作ることも立派な防災訓練になります。
毎年9月1日の防災の日などに、家族会議で「災害時の連絡方法や避難場所」を再確認しておくと良いでしょう。
学校との連携も大切です。
学校では地震や火事を想定した避難訓練が行われており、先生の指示に従って安全に避難する練習をしています。
もし学校にいるとき災害が起きたら、基本的には先生の指示に従うことが一番です。
学校は防災用の備えもあり、安全が確保されるようになっています。
また、小学校では保護者が迎えに来るまで児童を学校に留め置く計画を立てているところが多いです。
保護者の皆さんは、学校の防災対応(引き渡し方法や避難場所)を事前に確認しておきましょう。
学校から配られる緊急時の引き渡しカードや連絡網もきちんと準備しておくことが大事です。
お子さんも、自分の学校では非常時にどう行動することになっているのか、先生や親御さんに聞いて理解しておきましょう。
そして、普段から子どもの居場所を把握しておくことも心がけましょう。
登下校中に地震が起きる可能性もあります。
もしもの時に備えて、通学路で危険な場所はないか子どもと一緒に確認したり、近くの交番や知り合いの家など駆け込める場所を教えておくと安心です。
地域の「子ども110番の家」など、困ったときに助けを求められる場所も確認しておきましょう。
共働き家庭特有の防災対策

日中不在時の子どもの安全確保
共働き家庭では、昼間にお父さんお母さんが仕事で家にいないことが多いですよね。
そんな日中に大きな災害が起きた場合、子どもの安全をどう守るか考えておきましょう。
まず、信頼できる近隣の大人やコミュニティと協力しておくことが重要です。
いざという時、周りに頼れる人がいると心強いです。
普段から近所の仲の良い方や、同じクラスの友達のお母さん・お父さんに「もしもの時はうちの子をお願いします」と相談しておきましょう。
例えば、「学校低学年の娘がひとりで留守番中に大きな地震が来たとき、同じマンションで子どもがいるお宅に行って、一緒にいさせてもらった」という体験談があります。
普段それほど交流のないご家庭でも、「困ったときはこのおうちに行きなさい」と子どもに教えておけば、子どもは意外と勇気を出して助けを求めてくれるものです。
地域の人と日頃から顔見知りになっておくことで、お互い助け合える関係を作っておけます。
家に大人がいない時間帯こそ、地域ぐるみで子どもを見守る準備をしておきましょう。
次に、子ども向け防災リュックの準備も検討しましょう。
大人用の非常袋とは別に、子ども自身が持てるサイズの防災リュックやポーチを用意します。
低学年のうちは重い荷物は難しいので、入れるものは必要最小限にします。
例えば、小さい懐中電灯やホイッスル(口笛)、携帯用の簡易雨がっぱ、水やお菓子(飴やビスケットなど少しの食べ物)、絆創膏(ばんそうこう)などの救急用品を入れておくと良いでしょう。
万一避難が長引いたときに退屈しないように、小さなメモ帳や鉛筆を入れておくのも一つの工夫です。
そして、緊急連絡先を書いたメモを必ず入れておきます。
子ども用防災リュックには、親の名前・電話番号、避難先(避難する場所)を書いたカードを入れておいてください。
名前や住所を書いたタグをリュックに付けておくだけでも安心です。
子どもが自分の名前や連絡先をまだ全部言えない場合でも、このカードがあれば周囲の大人に助けを求めやすくなります。
職場との防災連携
共働き家庭では、職場での備えも重要です。
お父さんお母さん自身が被災したときの安全を確保し、早く家族と連絡を取るために、勤務先の防災計画を確認しておきましょう。
まず、自分の会社や働いているビルの避難経路や非常口の場所をチェックします。
非常階段の場所や、避難訓練の手順を覚えておきましょう。
会社によっては社員向けの防災マニュアルや安否確認システムを用意しているところもあります。
勤務先の防災担当者に確認して、災害時に会社がどのように従業員の安全確認を行うか知っておくと安心です。
例えば、社内の安否確認メールや連絡網の仕組み、非常用の食料・水の備蓄があるかなどを調べておきましょう。
大地震などで交通機関が止まり、自宅に帰れなくなる「帰宅困難」の状況に備えることも必要です。
無理に歩いて帰ろうとすると道路が人でいっぱいで危険だったり、かえって時間がかかる場合があります。
実際、東日本大震災のときも、道が人であふれて帰宅できずに会社や学校に留まった人がたくさんいました。
そのため、大規模災害時にはすぐに帰宅しようとしないことも大事です。
普段職場がある地域で決められている「一時滞在施設」や避難場所があれば確認しておき、必要なら会社に待機するという選択も考えましょう。
東京都など大都市では、災害時に帰宅困難者がむやみに移動しないよう促す計画があります。
職場に家族へ連絡できるツール(公衆電話やネット環境)があるかも確認し、無事を会社から家族に連絡してもらえる手段があると安心です。
さらに、職場に置き非常袋を準備しておくのも良いでしょう。
職場で被災しそのまましばらく会社に留まる場合に備えて、スニーカー(歩きやすい靴)や携帯充電器、簡易食料(チョコやクッキー等)と水のペットボトル、小型ラジオなどをデスクの中に置いておく人もいます。
また、家族と離れ離れになる可能性を考えて、家族間で役割分担を決めておくことも共働き家庭では重要です。
「パパが迎えに行けないときはママが行く」「それも難しい場合は近所の○○さんにお願いする」といったプランB・プランCを話し合っておきましょう。
どちらか一方が帰宅困難となってももう一方が子どもを迎えに行く、会社で待機する場合は連絡をどう取るか――事前の取り決めがあれば、いざという時も落ち着いて行動できます。
最新の防災情報とグッズ

子ども向け防災リュックの紹介(2025年の新商品)
最近では、共働き家庭の「もしも」に備えて子ども用の防災リュックが開発・販売されています。
例えば2025年に発売された「Koremo. 子ども用防災リュックセット」は、5歳~小学校低学年くらいの子どもが一人でも安全に避難できるよう工夫されたリュックです。
このリュックの最大の特徴は、フードのように防災頭巾(ぼうさいずきん)が一体化している点です。
リュックを背負うとスナップボタンでつながった防災頭巾が頭を覆ってくれるので、落下物から頭を守ることができます。
さらに、明るいベージュ色のリュックには360度反射テープが付いており、暗い夜道でも車などのライトに反射して子どもの居場所がわかりやすくなっています。

重さは防災用品を全部入れてもわずか約550グラムととても軽量で、体の小さな子でも背負いやすい設計です。
このリュックには、防災用品11点が最初からセットになっています。
中身の例を挙げると、懐中電灯(ライト)、ホイッスル(助けを呼ぶ笛)、子ども用レインコート、子ども用軍手、マスク(3枚)、絆創膏(2枚)、アルミ保温シート(体を包んで暖かくするシート)など、子どもが避難時に必要となるアイテムがひと通り揃っています。

他にも、親子で緊急連絡先や避難先を書き込める「防災カード」や、避難のしかたをまとめた「避難指示書」も入っており、親子で一緒に防災について話し合うきっかけになります。
デザインもシンプルで普段部屋に置いてあっても邪魔にならず、いざという時にサッと子どもが背負って逃げられる安心な防災バッグと言えるでしょう。
防災士という防災の専門家が監修して作られており、共働きで日中子どもだけになる家庭の声を取り入れて開発された商品です。
「リュックを背負うだけで親も子も少し安心できるように」との思いで作られており、「各家庭に子ども用防災バッグが1つずつあるといいな」という開発者の願いが込められています。
興味がある方は、防災グッズ選びの参考にしてみてくださいね。
防災意識向上のためのリソース(アプリ活用・防災訓練への参加)
防災対策はグッズを揃えるだけでなく、最新の防災情報を入手する仕組みも大切です。
今はスマートフォンの防災アプリを利用して、リアルタイムで災害情報を受け取ったり、家族とお互いの位置情報を共有したりすることもできます。
例えば、「ココダヨ」という防災アプリは家族など2~8人のグループ向けで、地震や洪水など緊急時にグループ内でお互いの無事と現在地をすぐ共有できるように作られています。
緊急地震速報などの警報と連動し、家族のスマホに自動で通知が届く機能もあるので、大きな地震が起きた際に離れた家族の様子をいち早く知ることができます。
このようなアプリを家族全員のスマホに入れておくと、災害時の安否確認がスムーズになるでしょう。
そのほか、各自治体が出している防災アプリ(例:東京防災アプリ)や、気象庁の提供する緊急速報アプリなどもあります。
みなさんもそういったアプリを触ってみて、災害情報の見方に慣れておくと良いですね。
また、地域や学校で開催される防災イベントや防災訓練にはぜひ家族で参加してみましょう。
地域の防災訓練は、実際に避難所まで歩いてみたり、消火器の使い方を練習したりといった貴重な体験ができます。
参加者同士で協力する訓練を通じて、普段から近所の人と顔見知りになり、いざという時に助け合える関係を築く大きな一歩にもなります。
自治体やNPO法人が主催する「防災教室」や「防災キャンプ」では、座学だけでなく自分の家の防災マップを作るワークショップや、テントを組み立てたり簡易コンロで炊き出し体験をしたりと、楽しみながら学べるプログラムも用意されています。
夏休みなどを利用して親子で参加すれば、自由研究にもなって一石二鳥ですね。
こうした訓練やイベントに参加することで、防災への意識が高まるだけでなく「自分たちは大丈夫」という安心感にもつながります。
日頃からの備えと訓練で、みんなの命を自分たちで守る力をつけていきましょう。
まとめ

最後に、本記事で紹介したポイントを振り返りましょう。
- 非常用持ち出し袋を準備し、水・食料やライト、救急用品など必要最低限のものを入れておくこと。【定期点検も忘れず!】
- 家族で話し合って防災計画を立てること。避難場所や連絡方法を決め、災害時に何をするか役割分担を決めておく。【いざという時に慌てないための約束】
- 子どもにも防災の知識を伝え、家庭や学校で防災訓練を行うこと。【絵本やゲームで楽しく学び、「もしも」に備える】
- 共働き家庭では近所の協力者を作り、子ども用非常袋を用意するなど特有の備えをすること。【昼間に親がいなくても子どもを守れる工夫】
- 防災グッズやアプリなど最新の便利なものも活用し、家族の安全確認や情報収集を素早く行えるようにすること。【親子で楽しみながら防災力アップ】
災害そのものを止めることはできませんが、災害に備えることは誰にでもできます。
大人だけでなく子どもたちも一緒に、防災について考え準備することが大切です。
家族全員で防災対策に取り組めば、いざという時きっと落ち着いて行動できるでしょう。
日頃の備えが家族の命と安心を守ります。
皆さんも今日からぜひ、家族で防災について話し合ったり、防災グッズをチェックしたりしてみてください。
準備を万全にしておけば、「もしも」の時にも家族みんなが助かり、また笑顔で集まれるはずです。
さあ、できることから一つずつ始めましょう!家族の安全を守る防災対策、一緒に実践していきましょう。